カーサ・ストーリー

価値観が明確で、知識もすごい。正直、手強い施主さまでした(笑)。
でも、大変なんて全然思わなかった。心から愉しめた「北欧モダンの家」。

総社市 H邸 Casa 025

「二年前、初めてお会いした時に施主のHさんにいきなりこう言われたんです。 『木口さんは最後の砦なんですよ』って。 正直、『えっ?』と思いました。だって正 真正銘、その時が初対面でしたから…」 と当時を振り返る木口氏。もちろんこれには理由がある。Hさまは、『カーサ・ カレラ』を訪ねるまでの五年間、大手から中小まであらゆるメーカーを訪ねたらしい。その思いは、ただひとつ「自分た ちが本当に愛着を抱ける、納得の家にしたい」。それだけだった。
「実はね。今だから言いますけど最初、私たちは木口さんを試していたんですよ。たとえば北欧で使われるパイプ式のヒーターを付けたいんですけど、そちらでできますか?みたいなリクエストをいっぱいしました。その答えですか? 想像以上でした。ここまで対応してくれるのかって。とことん付き合ってくれましたよ。それからは、完全にお任せ状態になりました(笑)」とHさま。「最終的にヒーターはボツになりましたが、ウチも北海道のメーカーに問合せたり、施工の可能性を模索したり、いろいろなノウハウを吸収することができました。大変だなんて全然思っていません。逆に勉強させていただいてありがとうございます、ですよ」。

Hさま邸の魅力(とにかくこだわりの深度がすごい)を、この誌面のみで伝えるのは不可能だ。あえてポイントを挙げるなら、日本製の塗料の色がイメージに合わなくて、イギリスからわざわざ取り寄せて塗ったリビングの赤い壁、北欧のメーカーの生地を使った特注のソファ、そして各空間で違った表情を見せる六種類の壁面素材だろうか。

最後にHさまの現在の心境。「今はね、脱力感でいっぱいです。それだけ木口さんと一緒に話し合って、悩んで、吟味して、を繰り返した日々が楽しかった。ホント 淋しいもんです(笑)」。施主と作り手が同じ思いを共有するのは容易ではない。この家はそういった意味で本当に贅沢で幸福な家だといえるだろう。

このインタビューは『オセラ No.37 初春号』に掲載されたものです。

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